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2021年2月24日

花粉症

花粉症が辛い。

日本中のスギとヒノキを根絶させるという募金活動があるのであれば大枚を叩いてでも参加させていただきたいくらいに苦しい思いをしている。

正直、人の身体をケアする事を生業としている人間がなんらかの症状に悩まされているというのはあまり好ましい事ではない。

現在進行形で腰に痛みを抱えている人間に『腰の痛みにはこういうケアをした方がいいですよ』と言われたところでなんの説得力もないし、『いやー身体硬いですねー、毎日ストレッチしてくださいね』と言っている奴の身体が硬かったらどの口が言ってんだよと思うはずだ。

だから自慢ではないが、毎日のストレッチとトレーニングはどれだけ時間がなくても必ず行うようにしているし、大袈裟ではなくそれも仕事だと思っている。

しかし今の世の中、そこまで徹底的に健康管理を行なっている人間でも抗う事の出来ない悪魔の粉が存在している。

それが花粉だ。

この時期になると目の痒みとくしゃみが止まらなくなるので患者さんからも『先生、花粉症なんですか?』と心配をされることがよくある。

こっちが心配されてどうすると情けない気持ちになりながらも『そうなんですよ、この時期どうしても辛くて』と答えることしか出来ない。

先日、同じく花粉症で苦しんでいるという患者さんから、『先生はいつから花粉症なんですか?』と聞かれた。

いつから発症するかは人それぞれで、うちの娘なんかはまだ三歳なのにも関わらず毎日くしゃみや目の痒みと闘っている。

僕自身、幼い頃はそんな兆候微塵もなかったのだが20歳を過ぎてから急に症状が出だしたので、その患者さんにも正直に『20歳超えてからなんですよ』と言ったら、

『えーそんな前からなんですね』

と言われた。

他の人からしたら花粉症に苦しむ者同士の日常会話に思えるかもしれないが、僕はこの言葉を聞いて衝撃を受けた。

そんな“前”からだったんですね。

去年までは『20歳からなんです』と言ったら『あー結構最近なんですね』と言われていた。もちろん僕も最近花粉症になった花粉症ビギナーのつもりでこのシーズンを乗り越えてきた。

しかしよく考えれば今年33歳。花粉症歴13年。

もうベテランに片足を突っ込んでいる年数だ。

ただそんな事は正直どうでもいい。花粉症ビギナーだろうが花粉症マスターだろうが花粉症は花粉症だ。症状に差が出るわけでもない。

僕が衝撃を受けたのが、33歳の人間にとっての20歳という年齢が、他人が客観的に考えると“そんな前”の出来事であるということだ。

花粉症になってもう13年になるという事と同時に、20歳という年齢が最近ではなくて“そんな前”の事なんだという至極当たり前の現実を突きつけられた感じがして、この直後は上手く会話を続けることが出来なかった。

もちろんその患者さんに他意はない。ただただ純粋に、この目の前の男が20歳から花粉症だと言ったので“そんな前から大変だろうに”と思っただけなのだろう。

事実は、花粉症なんかよりよっぽど辛いみたいだ。